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Posted by んだ!ブログ運営事務局 at

2015年10月31日

見分けがつかないから、瞳の色で区別

瞳の色

と、エツジが二人の顔を見つめて、尋ねた。
「なんで、二人の瞳は違う色なの?」
「ああ」とチャコが話題を見つけて嬉しそうに笑った。
「これはね、カラーコンタクトなの。博士でさえ、私たちの見分けがつかないから、瞳の色で区別できるようにしたの」
「え?博士も区別できないの?」
「あの人は研究一筋で、元々、女性の顔を憶えることも面倒だと思う人だから」
グレースは、クスクス笑って言った。どうも姪っ子である二人にとっても博士は特異な人種らしい。
「だから姉の私が大人っぽいグレー、妹が明るいブラウンにしたの」
「それでも博士は名前と色が一致しないみたいで、私たちめったに名前で呼ばれないの」
チャコの意見に、僕は張り切って提案する。
「じゃあ、僕たちの呼び名を博士に教えてあげたら?」
「グレース」「チャコ」という呼び方と名前の由来を教えてあげると、二人はまた、大爆笑した。クローンのはずの二人は、なんのことはない、笑い上戸のにぎやかな双子の姉妹だった。が、知佐姉ちゃんのような指摘はせず、今後はそう呼んでね、と笑っていた。

家に帰ってことの顛末を語ると、両親は、よそ様のお宅にもぐりこんで、と苦笑し、
特にクローン問題の解決にショックを受けたようではなかった。僕は、大人たちはウワサを楽しんでただけで、どこかで事実を知っていたんだな、と虚しくなる。
知佐姉ちゃんは、「ふーん、そう」と言ったきり、部屋から出て来なくなった。そしてしばらくして、僕たちの探り当てた事実を、ちょっと書き変えて、例えば博士は、遺伝子操作マニアという設定で、双子のクローンは男の子のクローンになり、瞳の色だけが違う、みたいなストーリーを仕上げて、何かの賞に応募していた。
そして僕たちは、今日もグレースとチャコのお屋敷でケーキをご馳走になっている。  
タグ :カラコン


Posted by 弘せりえ 2014apr at 17:25Comments(0)短編

2015年10月28日

天才、知佐姉ちゃん

知佐姉ちゃん

僕の切羽詰まった問いに、グレースも吹き出す。
「君のお姉さんは天才ね。そう、私たちは、ギリギリ博士が作ったクローン人間」
落ち着いたグレースの言葉に、僕たちはパニックになる。
「やっぱりそうなのか!!」
僕の雄たけびに、グレースはさすがに、困った顔で笑いながら
「・・・だったら面白かったのにね」と続ける。
僕とエツジは「え?」と固まった。
グレースによると、双子は半年前に両親が離婚して、都会からこの町に引っ越してきたらしい。ギリギリ博士は、二人にとって、伯父に当たるらしく、つまり彼女たちは博士の姪っ子なのだそうだ。
それにしても、と、僕は知佐姉ちゃんの疑問をぶつける。
「なんで学校に行ってないの?」
双子は顔を見合わせて苦笑する。
「現実的な話でがっかりなんだけど、私たち、高校を卒業していて、今、大学受験の浪人中なの。それに、博士の意向もあって、予備校とかじゃなくて、優秀な家庭教師をつけて勉強しているの。本当は一人か、姉妹で暮らしたかったんだけど、それは大学に受かってからってことになって」
聞けば、なんの不思議もない話である。知佐姉ちゃんのツッコミどころ満載なストーリーに腹が立ってきた。
「じゃあ、なんで外出しないの?」
どうしても一矢報いたくて、僕は質問する。チャコは、ちょとんとしている。
「してるわよ。車で」
「あ・・・」
僕は裏庭に大きな外車が止めてあることを思い出した。学校とは無関係な双子たちは
僕たちのいない、静かな平日に、車で買い物したりするのだろう。だから、彼女たちが
あの車で外出したところは見たことがない。
 第一、こんなに都会風の彼女たちが、僕の町の商店街で買い物をしているのを見たことがない、と今まで真剣に不審がっていた自分が恥ずかしくなった。
彼女たちは平日のいつでも、車で都会のブティックで買い物できて、それを高校生の知佐姉ちゃんも知らなかっただけだ。うちの両親も共働きなので、平日の昼の出来事は殆どしらない。
しゅん、として、出されたケーキを食べている僕たちに、グレースとチャコは、なんだか申し訳なさそうだった。  


Posted by 弘せりえ 2014apr at 17:15Comments(0)短編

2015年10月25日

片方は英語名で、もう一人は日本語名って

双子

「なんて安易なネーミングなの?それにそっくりな双子が、片方は英語名で、もう一人は日本語名って、どうして変だと思わないかな??」
でも、小学生の僕たちにとって、それは珠玉のネーミングだった。なぜなら、グレースは雰囲気が大人っぽく、チャコは子供っぽかったからだ。そしてグレースはいつもグレーの高級そうな猫を抱いていて、チャコはどこにでもいそうな三毛猫を抱いていたからだ。
いつか見つかるのでは、と僕とエツジは用心していたのだけど、双子の彼女らはとっくに小さな侵入者を知っていて、たまたま今日、声をかけてきた。というのも、三毛猫が僕らに飛びかかってきたからだ。
「こら! ミケ!」
これまた安直な名前を付けられた三毛猫は僕らの手前で、チャコにひっ捕まった。
「いつも御苦労さまね、近所の子供たち」
チャコは、三毛猫を抱きながら笑った。
「ねぇ、ユキ、そろそろ歓迎してあげようか?」
「いいわよ、ユカ」
なんとチャコはユカ、グレースはユキ、という名前らしい。
僕らはおそるおそるサンルームに入って行った。
そこで、グレースが、お手伝いのおばさんに、紅茶とケーキをふたつ頼んでくれた。
おばさんは、侵入してきた僕らを見て、「やっと捕まった」と笑っていた。この町のおばさんではないみたいだ。
グレースとチャコは、やっぱり瞳の色と猫の種類以外、そっくりだった。
「そろそろ、町のウワサを聞こうかと思ってたんだ。白状しなさい、何が知りたいの?」
チャコが、そう聞いてきた。僕らは仕方なく、知佐姉ちゃんの妄想的SFストーリーを語るはめになった。
僕の話を聞きながら、二人は爆笑した。特に、博士が「ギリギリ博士」と言われてること、二人が博士の娘のクローンであると思われていることに、チャコは腹を抱えて笑った。
「で、瞳の色だけで、ユキがグレース、私がチャコ?」
「で、でも、クローンなんでしょ?」  


Posted by 弘せりえ 2014apr at 17:05Comments(0)短編

2015年10月22日

お屋敷の庭に忍び込んでいた

屋敷

僕は、しょっちゅう、同じクラスのエツジと一緒に、そのお屋敷の庭に忍び込んでいた。
そこには変な博士と、知佐姉ちゃんが想像するところの、博士が作った2人のクローン人間がいる。博士のお屋敷の表札が「小田切」とあり、時々見かける博士の落ち着かない様子から、僕らは博士を「ギリギリ博士」と呼んでいる。

僕は小学校4年生のケンタ。ちなみに知佐姉ちゃんは、僕の姉で、作家を目指す高校生。
近所でいろいろ評判になっている博士の情報をまとめて、それらしく仕上げて、僕とエツジに教えてくれる。
それによると、博士の屋敷にいる双子(これは近所でも見かけた人がいる)は、博士が亡くなった娘さんをクローンとして再生したらしい。しかも、一人では、また亡くなったら悲しいから、クローンは2体作ったのだ、ともっともらしく知佐姉ちゃんは僕らに語った。僕とエツジは恐ろしくなった。だから、あの博士は世間の目を恐れて、いつもあんなにギリギリな感じなんだ、と。
僕の両親によると、博士は昔流行った、タイムワープのものの映画に出てくる博士に似ているらしい。それだけで知佐姉ちゃんの想像は広がった。
「だって、あの双子、学校も行ってないじゃない?おかしいよ、ケンタ、調べてきな」
知佐姉ちゃんの命令が下ったのは、3ケ月ほど前。と、いうのも博士とクローンたちが元々空き家だった古いお屋敷に引っ越してきたのが、半年ほど前だから。
僕とエツジは、今日も、博士の庭に忍び込んでいた。生垣が隙間だらけで、体が小さい僕たちには、侵入が簡単だった。
双子のクローンは、今日も、サンルームでお茶をしていた。
かなりヤバイ至近距離でやっとわかったのが、一人がグレーの瞳、もう一人がブラウンの瞳ということ。もはや、瞳の色以外、彼女たちを識別するのは不可能だった。黒くて長い髪、白い肌、スレンダーな体型、いつもふわっとした優雅なロングワンピース。
僕たちは、グレーのほうを「グレース」、ブラウンのほうを「チャコ」と呼んでいた。このネーミングには、知佐姉さんの厳しい指摘が入った。  


Posted by 弘せりえ 2014apr at 17:22Comments(0)短編